非閉塞性無精子症 顕微鏡手術で6割受精 仙台

 顕微鏡手術で採取した精子を使った顕微授精で、妊娠が極めて困難とされる「非閉塞(へいそく)性無精子症」の患者も「閉塞性無精子症」の場合と同様に受精率が6割を超え、妊娠率も5割以上となったことを、京野アートクリニック(仙台市青葉区)の菅藤哲医師(泌尿器科)らのグループが確認した。

 無精子症は男性不妊症の一つで、精液中に精子が認められない。100人に1人の割合とされ、精子を運ぶ管が詰まっている「閉塞性」と、精子をつくること自体が難しい「非閉塞性」がある。

 患者のうち8割は非閉塞性。その半数程度は精巣の一部で精子がつくられているが、従来の「精巣生検」では発見が難しい。管の手術などで妊娠につながるケースもある閉塞性と比べ、妊娠は困難と考えられていた。

 菅藤医師らは精巣生検より精子を見つけやすく、患者の負担も軽減される手術用顕微鏡を採用。2006年1月から07年8月にかけて無精子症と診断された58人の精巣組織の一部を顕微鏡手術で採取した。

 診断では非閉塞性40人、閉塞性18人。うち非閉塞性は17人、閉塞性は18人全員の精子を同じ日に採取したパートナーの卵子に顕微授精した。

 その結果、受精率は非閉塞性61.6%、閉塞性63.6%。初回の治療による妊娠率はそれぞれ52.9%、55.6%で、ほとんど差がなかった。

 パートナーが妊娠した患者の中には、別の病院の精巣生検で精子を見つけられず、非配偶者間人工授精(AID)を勧められたケースも少なくなかったという。研究結果は2月6日付の米医学専門誌に発表した。

 菅藤医師は「非閉塞性でも、閉塞性と変わらない受精率、妊娠率を得られることを証明できた。子どもの出生を知る権利などの課題を考えると、AIDは最終的な選択肢であるべきだ。今後は出生率も調べていきたい」と話している。

2008年03月04日火曜日